ソフトバンクG、純利益5兆円の最高益——その大半が「含み益」である意味
ソフトバンクグループのFY2025純利益は約5兆円。日本企業史上最高だが、その源泉の多くはOpenAI株の評価益だ。期末評価額796億ドルに対し投資コストは346億ドル。記録的決算を「含み益」という視点からどう読むべきか、一点集中の賭けの構造とともに掘り下げる。
2026年5月13日、ソフトバンクグループ(SBG)が発表した2026年3月期(FY2025)の決算は、純利益が約5兆円に達し、日本企業として過去最高を記録した。これまでの日本企業の最高益を塗り替える数字であり、見出しだけを追えば「日本を代表する企業が空前の好決算」という話に見える。
だが、この5兆円を額面どおりの「稼ぐ力」と受け取るのは早い。利益の大部分は、保有するOpenAI株などの評価額が上がったことによる「含み益(未実現の評価益)」だからだ。実際にキャッシュとして入ってきた利益とは性質が異なる。
記録的な数字の裏で、SBGは事業の重心を「通信・投資の複合体」から「AIに張る投資会社」へと大きく移している。本稿では、決算の数字を分解しながら、この利益の正体と、一点集中の賭けが抱える構造を読み解く。
日本企業史上最高、純利益約5兆円
まず事実関係を整理する。SBGのFY2025(2026年3月期)の純利益は5兆23億円。報道各社は「日本企業として過去最高」と伝えた。けん引役は二つ——投資事業を担うビジョン・ファンドと、傘下の通信事業である。
中でもビジョン・ファンド事業の税引前利益は6兆4,446億円に達し、前年度の1,150億円の損失から劇的に好転した。純資産価値(NAV)も2026年3月末時点で40.1兆円となり、前年の25.7兆円から大きく積み上がった。数字の規模だけを見れば、SBGの「復活」は鮮明である(いずれもFY2025決算、2026年5月13日発表時点)。
利益の正体は「OpenAIの含み益」
では、この巨額利益はどこから来たのか。答えははっきりしている。ビジョン・ファンドが計上した約460億ドルの年間利益の多くは、OpenAIへの投資価値が急騰したことによるものだ。
| 項目(FY2025、2026年5月13日発表時点) | 金額 |
|---|---|
| OpenAIへの累計投資コスト | 約346億ドル |
| 期末のOpenAI保有評価額 | 約796億ドル |
| 当期に計上した評価益 | 約450億ドル |
| OpenAIへの総投資コミット | 約646億ドル |
346億ドルを投じたOpenAI株の評価額が796億ドルまで膨らみ、その差額が当期の利益を押し上げた。これは「OpenAIを高く売って得た現金」ではなく、「いま売ればこれだけになる」という評価上の利益である。OpenAIの企業価値が今後下振れすれば、同じ理屈で評価損に転じうる。記録的な5兆円は、OpenAIという一社の評価額に強く連動した数字なのだ。
「投資会社」への変身と一点集中の賭け
SBGはこの流れをさらに加速させている。2026年2月には、第2号ビジョン・ファンドを通じてOpenAIへ300億ドルを追加出資する正式契約を結んだ。出資前評価額(プレマネー)は7,300億ドルとされ、資金は2026年の4月・7月・10月に各100億ドルずつ投じられる計画だ。これによりOpenAIへの総投資コミットは約646億ドルに膨らむ。
これは、一社への集中投資としては前例のない規模である。SBGはかつてAlibaba株の含み益に支えられた時期があり、その後Vision Fundの不振で巨額損失も計上した。今回はその主役がOpenAIに置き換わった格好だ。AIの覇権を握る企業に賭ける戦略は、当たれば桁違いのリターンを生むが、評価額が一社の動向に握られるという脆さも併せ持つ。利益の振れ幅が大きくなるのは、この一点集中の必然である。
含み益が利益を作る決算をどう読むか
ここからビジネス側が学べる視点は明確だ。「過去最高益」という見出しを見たら、その利益が実際のキャッシュフローによるものか、保有資産の評価替えによるものかを必ず分けて読むことである。両者はまったく性質が異なる。評価益は会計上の利益を押し上げるが、配当や再投資に回せる現金がその分増えるわけではない。
SBGの場合、本業の通信が安定したキャッシュを生む一方、利益の振れの大半は投資先の評価額に由来する。だからこそ投資家は、純利益の絶対額よりもNAV(純資産価値)の推移や、保有資産の中身と集中度を見る。決算を「いくら儲けたか」だけで判断せず、「その利益はどこから来て、どれだけ確実か」まで踏み込む——記録ずくめの決算ほど、この基本が効いてくる。
Armと次の一手、そして見えるリスク
SBGのもう一つの柱が、半導体設計のArmだ。Armは2030年までに売上高とEPS(1株当たり利益)を5倍に伸ばし、1,000億ドル超の市場で15%以上のシェアを取る目標を掲げている。AI向け半導体の需要拡大を追い風に、SBGはOpenAI(モデル・サービス)とArm(半導体)という、AIの両端を押さえる布陣を敷きつつある。
一方でリスクも明確だ。利益がOpenAIの評価額に強く依存する以上、AI投資全体が冷え込めば評価益は一転して評価損になり得る。巨額の追加出資コミットはキャッシュ拠出を伴い、資金繰りの負担も増す。SBGの記録的決算は「AIの時代に最も大胆に張った企業」の現在地を映すと同時に、その賭けが含む振れ幅の大きさを示している。称賛も警戒も、同じ一つの構造から生まれている。
まとめ
- ソフトバンクグループのFY2025(2026年3月期)純利益は約5兆23億円で、日本企業として過去最高(2026年5月13日発表)。NAVは40.1兆円(前年25.7兆円)に拡大。
- 利益の大部分はOpenAI株などの評価益。OpenAI保有の期末評価額は約796億ドルで、投資コスト約346億ドルに対し約450億ドルの評価益を計上した。実現したキャッシュではない点に注意。
- SBGは2026年2月にOpenAIへ300億ドルの追加出資(プレマネー7,300億ドル、4・7・10月に各100億ドル)を契約し、総コミットは約646億ドルへ。一社集中の賭けは大きなリターンと大きな振れ幅を併せ持つ。
- 「過去最高益」は、キャッシュ由来か評価益由来かを分けて読むべき好例。ArmとOpenAIでAIの両端を押さえる一方、AI投資が冷えれば評価益が評価損に転じるリスクが残る。
出典
本記事はBusiness Age 編集部が、以下の複数の出典を確認したうえで独自に構成・編集したものです。詳細は各出典をご確認ください。
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