副業解禁は過去最高、でも月5.4万円——AIが変える「一人で稼ぐ」の天井
企業の副業容認率は64.3%と過去最高。一方で副業の平均月収は理想の半分の5.4万円という現実も。日本の副業データと、AIで一人会社が拡大する世界の潮流を接続して読み解く。
副業を認める会社が、ついに過半数を大きく超えた。パーソル総合研究所が2025年10月に公表した第四回調査は、日本の副業がもはや例外でも黙認でもなく、制度として定着しつつあることを数字で示した。同時に、別の調査は「やってはみたが、思ったほど稼げていない」という、もう一つの現実も映している。
この二つを並べると、副業の論点が「やっていいかどうか」から「どう成果を出すか」へ移ったことがわかる。そして世界に目を向ければ、AIを武器に一人で大きな売上を立てる「一人会社」が静かに広がっている。日本の副業のリアルと、その潮流をつなげて考えてみたい。
容認率64.3%、実施率11.0%——日本の副業は「過去最高」に
まず制度面から。パーソル総研の調査によれば、企業の副業容認率は2025年に64.3%へ達した。2018年の50.9%から一貫して右肩上がりで、なかでも「ルール・制限なく認める」全面容認率は14.3%(2018年)から28.3%(2025年)へとほぼ倍増している。下のグラフがその推移だ。

正社員側の副業実施率も11.0%と過去最高を記録した。とくに20代男性で動きが目立つ。副業はもはや一部の人の特殊な選択ではなく、働き方の標準オプションの一つになりつつある。
理想は月10.8万円、現実は5.4万円——埋まらない差
ところが、収入面の現実は華やかではない。パーソルキャリアのJob総研が2025年7月に行った調査では、副業経験者は39.2%にのぼり、今後「始めたい・続けたい」人は66.7%と意欲は高い。だが実際に得た副業の平均月収は5.4万円で、理想とする10.8万円のおよそ半分にとどまった。
パーソル総研のデータも、この手応えのなさと整合する。副業の平均時給は3,617円(中央値2,083円)、月間の平均副業時間は23.0時間。さらに、本業の残業と副業を合わせて月45時間超の長時間労働に陥っている人が約3割いる。時間を切り売りする副業は、稼ぎの天井も体力の天井も低い、ということだ。
| 指標 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 企業の副業容認率 | 64.3% | 2018年50.9%から上昇 |
| 正社員の副業実施率 | 11.0% | 過去最高 |
| 副業の平均時給 | 3,617円(中央値2,083円) | 時間あたりの天井 |
| 月間平均副業時間 | 23.0時間 | — |
| 副業の平均月収(実態) | 5.4万円 | 理想は10.8万円 |
ランサーズの調査では、副業・兼業者の約4割がすでに個人事業主・フリーランスとして活動し、3割が正社員だという。働き方の入り口は多様化しているが、「時間を売る」モデルにとどまる限り、上の数字の壁は越えにくい。
世界では「一人会社」が桁違いに——AIが運営コストを最大98%削る
ここで視点を海外に移す。米国では非雇用型の「ソロ事業者(solopreneur)」が約2,980万人に達し、合計で約1.7兆ドルの売上を生むとされる(Epirus VC、2026年)。もっとも、その78%は年商5万ドル未満で、100万ドルを超えるのは0.2%。日本同様、大半は小さい。
変化は「天井」のほうで起きている。AIが開発・運営のコストを最大98%押し下げたことで、かつてはエンジニアチームが必要だった製品を個人が作れるようになった。創業者が一人だけのスタートアップの比率は、2019年の23.7%から36.3%へ上昇している。象徴的なのが、たった一人で年間経常収益360万ドルを生むAI証明写真サービスや、6か月で25万ユーザーを獲得し2025年にWixへ約8,000万ドルで売却された個人開発のノーコードツールだ。共通するのは、人手ではなくAIで「一人あたりの生産性」を極限まで高めた点にある。
時給3,617円の天井をどう上げるか——日本の副業に引きつけて
では、この潮流を日本の副業にどう生かすか。手順ではなく、考え方の軸として三つ示したい。
第一に、「時間を売る副業」から「成果や仕組みを売る副業」へ重心を移すこと。時給3,617円は時間に比例する天井だが、デジタル商品やテンプレート、自分の発信に紐づくサービスは、一度作れば時間と切り離して売れる。世界の一人会社が示したのは、まさにこの「時間に比例しない収益」の威力である。
第二に、AIを「作業の代行」ではなく「単価を上げる増幅装置」として使うこと。同じ23時間でも、AIで納品の質と速度を上げれば、時給3,617円という前提そのものを書き換えられる。一人あたりの生産性を引き上げた海外のソロ事業者と、発想は同じだ。
第三に、長時間労働の罠を避けること。本業+副業で月45時間超の残業域に入る人が3割という事実は重い。稼ぎを増やす方向が「時間を足す」になっている限り、体力が先に尽きる。増やすべきは時間ではなく、一時間あたりの価値である。
まとめ
- パーソル総研の第四回調査(2025年8月実施・10月公表)で、企業の副業容認率は64.3%、正社員の副業実施率は11.0%と、いずれも過去最高。
- 一方Job総研調査(2025年7月)では副業の平均月収は5.4万円で、理想10.8万円の約半分。パーソル総研の平均時給は3,617円(中央値2,083円)、月平均23.0時間。
- 米国ではソロ事業者が約2,980万人・約1.7兆ドル規模だが78%は年商5万ドル未満。一方でAIが運営コストを最大98%削り、一人で巨額の売上を立てる例も登場。
- 日本の副業の天井を上げる鍵は、時間を売るモデルから成果・仕組みを売るモデルへ移し、AIを単価の増幅に使い、時間を足す消耗戦を避けること。
出典
本記事はBusiness Age 編集部が、以下の複数の出典を確認したうえで独自に構成・編集したものです。詳細は各出典をご確認ください。
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